毛細血管拡張性(運動)失調症は、Ataxia
telangiectasia(ATと略)、ルイ・バー症候群とも呼ばれ、免疫不全症のひとつです。発生頻度は、10万人に一人とか、30万人に一人とか、40万〜100万人に一人だとか言われています。
※ 医療には全くの素人のだんぼが2008年当時まんまるの病気について調べた内容です。
個人によって、その進行・症状など本当に様々な病気ですので、あくまで参考程度にお願いします。必ず主治医にご相談くださいね。
原因
責任遺伝子は、11番染色体(11p23)上のATMという遺伝子で、この遺伝子に問題があるようです。
ATM遺伝子は、傷ついた細胞の修復に必要な細胞周期を制御したり、DNA修復やアポトーシス(がん化する前の細胞の積極的自殺)等の反応に重要な働きを果たしています。これらの細胞のがん化への抑制機能が働かないことで、この病気の特徴である悪性腫瘍を高頻度に発生させる原因にもなっています。
「常染色体劣性遺伝疾患」なので、両親のどちらともがこの保因者(キャリア)であるといえます。
症状
(中枢神経系)
・歩行開始とともに明らかになる進行性歩行失調(体幹失調)、除々に確実に進行:必発症状
・構音障害(どもり)、よだれ
・舞踏病アテトーゼ
・低緊張性顔貌
・進行性眼球運動失行、眼振
(皮膚症状)
・目や皮膚の毛細血管の拡張(運動失調より遅れて出現し、3歳から6歳ごろより認められる)
・皮膚、頭髪、血管の早老性変化
(免疫系)
・免疫不全症状、易感染(繰り返す感染症等、重症化しやすい)
IgA・IgG、IgE、IgG2、IgG4の低下
(内分泌系)
・二次性徴欠如
・低身長等の発育不良
・耐糖能低下
・精巣委縮(停留睾丸)、月経不順など
(その他)
・高頻度で発症する悪性腫瘍
個人的には、やはり免疫不全症状、つまり感染に対する抵抗力のなさが一番問題になると思います。あとは、日常生活に多くの影響のある歩行障害です。進行すると他の神経症状も出現してくるので生活全体に関わってきそうです。あとは、悪性腫瘍の発症はもちろん、とても怖いです。
検査所見
α-フェトプロテイン(AFP)の上昇、IgA・IgG、IgE、IgG2、IgG4の低下、小脳虫部の萎縮
治療
根治治療はなく、対処療法にとどまる。抗体低下の場合は、免疫グロブリンの補充療法、神経症状にはリハビリ等の実施、悪性腫瘍を発症した場合は、ATの特性から二次がんのリスクや様々な合併症の頻度が高いため、プロトコールの改善・修復を行う。
根治治療として、他の一部の原発性免疫不全症候群で適応されている幹細胞移植は、ATの特性のため二次がんのリスクや様々な合併症のリスクが高く、現実的な治療法でない。
予後
小脳性失調のため、小児期より車イス(平均8歳で車いす生活)から寝たきりの生活へとなる場合も。また、免疫不全症状により、感染症にかかりやすく、重症化しやすく、時に致死的となる。さらに、リンパ性悪性腫瘍が、300倍から1000倍以上という高頻度で発症する。
多くは肺感染症等の呼吸器感染や、悪性腫瘍の発症などにより、10歳から15歳までに死亡することが多いとされ、我が国の登録患者の死亡例の平均死亡年齢は、14.1歳である。